2026年8月25日、字節跳動(ByteDance)は生産性シーン向けに開発された新エージェント製品・ブランド「豆包工作(Doubao Work)」を正式に発表した。これにより、中国のAIオフィス競争には騰訊(Tencent)WorkBuddy、アリババ千問オフィス、百度庫庫AI、字節跳動豆包工作という主要4社がそろい踏みし、競争の軸は機能比較から「仕事の入口」の争奪戦へと移行した。
1. 豆包工作とは何か
豆包工作は、生産性ファーストのエージェントとして位置づけられている。目標を与えると、タスクを自律的に分解し、適切なツールを呼び出し、複雑なワークフローを納品まで推し進める。公式サイトからダウンロードできるスタンドアロンのデスクトップアプリとして提供されるほか、最新の豆包デスクトップクライアントにも組み込まれている。ダウンロード・ログイン・アップグレードにより、30日間の無料サブスクリプション特典を受け取れる。
今回の発表は、豆包そのものの戦略的アイデンティティの転換でもある。従来コンシューマー向けチャットアシスタントとして知られていた豆包は、今後は字節跳動のTo Bビジネス全体の統一的な入り口かつインテリジェントなハブとなる。「チャット窓口」ではなく「デジタル社員」への変身である。
ポジショニングの要点:
- 自律的な実行:目標を分解し、手順を計画し、ツールを呼び出し、手取り足取りの指示なしに反復処理する。
- フルスタックな成果物:ドキュメント、表、スライド、画像、動画、ウェブページ、さらには小規模システムまで。
- エンタープライズ対応:飛書(Feishu)との深い統合により、実組織のコンテキストへアクセス可能(第3章参照)。
- 無料トライアル:新規・アップグレードユーザー全員に30日分のサブスクリプション特典。
2. コア機能:チャットアシスタントからデジタル社員へ
公式資料が示す機能群は、Q&Aの枠を大きく超えている。特に注目すべき能力は以下の通り。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| コンテンツ生成・編集 | ドキュメント、表、スライド、音声/動画、ウェブページを作成。企画書、データ分析、報告書も処理 |
| 範囲選択編集 | ドキュメント・表・スライド・ウェブページの任意の領域を囲んで指定し、ピンポイントで部分修正 |
| PC・ブラウザ操作 | ユーザーのPCを妨げずに仮想デスクトップとブラウザを操作。過程はリアルタイムで可視化され、いつでも一時停止・引き継ぎ可能 |
| クラウドPCでの継続実行 | 長時間タスクはクラウドPCに移管され、ローカルPCの電源を切っても処理が続行される |
| 複数Agentのチームワーク | 複数のAgentで「作業チーム」を組み、複雑な業務を分担・協力して遂行 |
| スキルライブラリ | PPTデザイン、クリエイティブ制作、音声文字起こし、スマート議事録、多次元テーブル、ホワイトボード、Markdownノート、クラウドドライブ、ショートドラマ制作、ECキャンペーン企画、論文フォーマットなど |
基盤モデルは3モードから選択できる——自動(Auto)、豆包2.1 Pro、Turbo。思考の深さと速度・クォータ消費のバランスを選べる。メディアの検証では、最下位の有料プランでも長時間のオフィス業務連鎖に十分耐えられると評価されている。
3. 飛書との深い統合:企業コンテキストが堀になる
競合オフィスAgentに対する最大の差別化要因は、飛書とのネイティブ接続である。飛書アカウントでログインすると、権限範囲内で企業のナレッジと作業コンテキストを引き継げる。飛書上に既にあるチャット履歴、ドキュメント、議事録、カレンダーがAgentの原材料になる。
発表時に示された活用例:
- 飛書を開かずに特定の会議の結論を取得する。
- 長大なプロジェクトのグループチャットをアクション項目にまとめる。
- 自社の過去文書に基づいて企画書を起草する。
- その週の実際のチャットとタスクから週報を生成する。
双方向のナレッジフローも重要だ。豆包工作と共同で作成したコンテンツや知識は飛書に蓄積され、編集・共有・再利用可能な企業資産となる——それが次のタスクで使えるコンテキストをさらに豊かにする。飛書内の旧豆包企業版の入り口は豆包工作へアップグレードされ、飛書のエンタープライズ分離機構もそのまま引き継がれるため、大手企業のAI導入を阻んできたデータセキュリティの懸念にも対応している。
4. 料金と提供状況
| プラン | 体系 | 備考 |
|---|---|---|
| 個人 | 旧「豆包プロフェッショナル」の3段階料金を継承。プラン間の主な違いは利用枠 | メディア検証では、最下位の有料プラン(約68元水準)でも長時間のオフィス業務に対応 |
| 法人 — Team | シート単位のサブスクリプション | AI利用量追加パッケージを別途購入可能 |
| 法人 — Business | 組織規模でのシート単位サブスクリプション | 同じ追加購入モデル |
プロモーション:ダウンロード/ログイン/アップグレードで30日間の無料サブスクリプションを進呈。既存契約者は有効期間が自動延長される。先行する競合に対して短期間で普及を狙う意図が見える。
5. 発表の裏側:「1か月」での組織再編
この話が注目されるのは、その速度ゆえである。字節跳動は1か月足らずで組織再編・能力統合・ブランド独立を完了させた。
| 日付 | 動き | 意味 |
|---|---|---|
| 2026年7月29〜30日 | 飛書製品チームを豆包に統合、新しい豆包製品チームを発足。飛書GTM(販売・マーケ・CS)は火山引擎(Volcano Engine)へ統合 | 豆包ブランド下への製品統合 |
| 7月下旬〜8月 | リリース前の急速な機能投入:スマホからのPC遠隔操作、Windows仮想デスクトップ、ローカル+クラウドPCのデュアルモード、サイドワークベンチ、スキルストア、コネクタ、ワークコンパニオン | 豆包のUIをチャット画面から複雑なワークフロー用の操作プラットフォームへ再構築 |
| 2026年8月24日 | TRAEとCoze(扣子)チームを豆包体系へ統合。TRAE IDE/CLIは豆包ブランドのコーディング製品ラインとして継続 | 全生産性ラインが1つのブランドに収斂 |
| 2026年8月25日 | 豆包工作正式リリース | 豆包がC向けチャットアプリからTo B統一入り口へ転身 |
字節跳動の歴史において、これほど密度の高い再編は珍しい。市場へのメッセージは明確だ——AIオフィスはもはや実験段階ではなく、本業である。
6. AIオフィス「ビッグ4」:戦況はここまで
豆包工作の登場により、主要4プラットフォームすべてが専用オフィスAgentを出荷済みとなった。
| 企業 | 製品 | 状況(2026年8月下旬時点) |
|---|---|---|
| 騰訊(Tencent) | WorkBuddy | 約半年公測、ユーザー数は1,000万人超。最速かつ現時点で最大のプレイヤー |
| アリババ | 千問オフィス | 2026年8月上旬に公測開始 |
| 百度 | 庫庫AI | 2026年8月中旬にブランド発表・独立アプリ公開。百度のオフィス系アシスタントは7月に月間アクティブ674.3万人で国内AIオフィスAgent第2位、前月比成長率1,063.79% |
| 字節跳動 | 豆包工作 | 2026年8月25日リリース——4社中 最後の参入 |
市場自体も三位数字の成長率で拡大している。易観(Analysys)のデータによれば、国内デスクトップAIオフィスAgent17製品の月間総アクセス数は2026年6月に6,000万回を突破し、3月の約2,000万回から3か月で3倍に増加した。業界では2026年を「デスクトップAgent元年」と呼び、競争の軸は機能チェックリストから日常業務の入口の掌握へ移った——企業の注意と予算がどこに流れるかを決める、プラットフォームを定義する争いである。
7. マーケター・企業にとっての意味
中国企業に向けてマーケティングを行う企業、そしてそれを支援する代理店にとって、3つの含意がある。
- 仕事の入口が再分割されつつある。 日常業務がAgentの中から始まるようになれば、発見、コンテンツ消費、そして最終的には購買検討もそれに伴ってシフトする。オフィスAgent内での生成エンジン可視性(GEO)は、検索と並んで注視すべきチャネルになる。
- エコシステム統合こそが堀。 豆包工作の優位性は、飛書の組織データの上に立っていることから来る。アリババ(釘釘/DingTalk)、騰訊(WeCom/WeChat)でも同様の展開が期待される。自社の中国B2Bバイヤーがどのエコシステムに実際にいるのか、ブランド側はマッピングすべきである。
- Agent経由の商取引に価格がつき始めた。 関連動向として、豆包経由で誘導されたホテル注文には約12%のチャネル手数料が課されると報じられている——AI Agentが課金対象の流通チャネルになりつつある証拠である。マーケティング予算は、アプリストアやモールと同様に、将来の「Agent掲載」費用を見込んでおくべきだ。
まとめ: AIオフィス「ビッグ4」が出揃い、主戦場は企業のデスクトップへ移った。中国市場を狙う海外企業は、オフィスAgentをオーガニックな可視性と将来の有料配布の両面における新興サーフェスと捉え、Agentが読める構造化コンテンツの準備を今から始めるべきである。
出典:国際金融報 via 今日頭条(2026-08-26)、毎日経済ニュース(2026-08-26)、網易/読創(2026-08-25)、鈦媒体APP(2026-08-25)、捜狐・度廠週刊(2026-08)、大衆日報(2026-08-26)。